経験がなくてもわかるブライダルインナー
私の知り合いのある夫婦に男性が単身赴任していた人がいる。週末だけしか会えないから、そのぶん、新鮮で、話もはずみ、喧嘩もしなかったというのだ。
それなのに、ようやく単身赴任が終わって、一緒に住めるようになったとたん、皮肉なことに二人の聞は冷ややかになってしまったのだそうだ。「こんなことならずーっと単身赴任してりゃあよかった」と、彼はぼやくことしきり、である。本当に転勤願いを出さんばかりの口ぶりなのだ。
そういえば、わざわざ別居結婚している人たちもいる。同じ東京に住みながら、あえて離れて住む道を選び、週末だけどちらかのマンションに行くようにしているのだ。
ひと頃流行した、いわゆるデインクスに別居をプラスした結婚だ。「たまに会うほうが絶対うまくいく」彼らは自信をもって、そう言い切る。
そうなのだろうか。そうなのかもしれない。
けれど、その一方で、ちょっと違うなという気もする。現実に、そういう生活をしている人がいる以上、否定することはできないが、どこかが違うような気がする。
そんな甘い汁を吸うような生活が結婚といえるのだろうか。甘い汁も苦い汁も、両方、一緒に味わってこそ、結婚といえるのではないだろうか。
もちろん、種々の事情で一緒にいられない場合はしかたがない。新鮮さを保つために必要もないのにわざわざ別居するというのはおかしいと思う。
夫婦の日常の乳離れを避けるために週末だけ会い、二人の暮らしを大切にしたいからと子供も持たない。そういう生活は、一見、素敵かもしれないけれども、私はそんな生活はいやだ。
新鮮さが失われでも、喧嘩しても、弱い面や汚い面を見せ合うことになっても、少しでも一緒にいようとするのが結婚というものなのではあるまいか。こんなことを言っているようでは、「素敵な奥さん」になる日は遠ざかる一方なのかもしれないが、それでもいい。
私にとって、結婚とは一緒に住むこと、あるいは住もうとすることにほかならないのである。楽しめる毎日がある結婚したからこそ、楽しめる毎日がある。
結婚しているからこそ、味わえる幸福がある。声を大にして、そう言いたい。
けれども、「じゃあ、具体的に例を挙げてみてよ。どんなとき、どんなふうに楽しめるっていうのよ。どこが恋人たちの幸福と違うのさ」と、問われると、私は答えにつまってしまう。
苦しまぎれでも何か言いたいが、なかなかうまくいかない。
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